かえるせいのおうじさま
「なんだか宇宙には変な人しかいないのかい?」
「宇宙人だからじゃなくて大人の人はみんなそうなんだよ。」
「大人の人ってどんな人だい?」
「いつも忙しいって言って、本当に大事なことは全然しないんだ。」
「確かに、命令をする王様は、必要のない誰も聞いていない命令をとても大切だと思っていたよね。」
「褒めて欲しい人は褒めてもらっても満足していなかった。」
「何をして褒めて欲しかったのか忘れてしまったんでしょう。」
「にわとりさんも、確かに子供のころはやりたいと思うことを大切にしていたような気もするけど、よく覚えてないんだよね。」
「それは大きな木が生えてしまって手に負えなくなっているんですよ。」
「大きな木?」
「かえるさんの星はとっても小さな星だったから一回木が根を張ってしまったら、もうどうしようもありません。大きな木を世話するだけで人生が終わってしまいます。」
「大きな木はどこから来るの?」
「大きな木だって最初は小さな芽なんです。小さな種が運ばれてきてやがて大きくなってしまうんです。そうなると本当にやりたいことを思い出す暇が無くなってしまうんです。」
「一回そうなってしまうと、忙しい、が口癖になってとにかく木の世話に一生を使ってしまうのです。」
「でも、そんなのおかしいと思わないの?」
「思いません、大人はみんな大きな木を世話しているから、自分のやりたいことを後回しにして木の世話をすることは偉いことだと思うようになるんです。」
「にわとりさんも何かやりたいことがあった気がするけど、何か大切なこと、みんなと同じことをしようとしてたら飛行機が落っこちたような気がする。」
「大きな木の世話をしているとやっている間は良いことをしている気もするけど、本当にやりたいことをする時間が無くなったとたんに気づいたりするのです。」
「こんなことをしている場合じゃなかった!!って。」
「大人になるってことは全部、諦めてしまうことでもあります、ですから、かえって時間を持て余してしまって大きな木の世話に夢中になってしまうんです。」
「自分で気づくのは難しいな。」
「人はそういう時に病気になることもあります、ゆっくり考えるためです。」
「自分の人生をゆっくり考えるなんて確かにそういう時にしかないかも。」
「しかし、人生をしっかり考えなさい、と言ってくれるわけではありません。急いで薬を飲んで病気を治して大きな木の世話に向かうのが普通です。」
「かえるさんは大きな木をどうやって手入れしてたの?」
「羊が小さいうちに食べてましたよ。」
「羊は木が大きくなる前に食べちゃうのか。」
「羊は自分のやりたいことを知っていますから、大きな木の世話なんてしたくないので木が小さな芽のうちに食べてしまいます。」
「にわとりさんの羊は大人になっていたから、やりたいことを忘れちゃったのか。だから飛行機が落ちちゃったんだ。」
「どうしてとっても大事なことなのに忘れちゃうんだろう?」
「子供は、いっぱいいっぱい不安にさらされて安心だけを求めるようになります。」
「そうなってしまうと、本当にやりたいことをすっかり忘れてみんなみたいに忙しい忙しい、って言ってることが目標になってしまうのです。」
「不安な時に、やりたいことを諦めると大人は急に優しくなるんだよね。」
「そうです、大人は自分で考えたり、やりたいことを忘れない子供が大嫌いですからね。」
「自分だって昔は子供だったのに。」
「だからこそ、夢を諦めない子供を見ると自分の子供のころを思い出して悲しくなってしまうのです。」
かえるせいのおうじさま 第四章 終わり
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