かえるせいのおうじさま
「今日はかえるさんはそわそわしてるね。」
「そうですかね、ちょっと用事があるのです。」
「へー、きつねさんの所かい?」
「今日は毒蛇さんに会ってきます。」
「えー!やめなよ、危ないじゃん。」
「毒蛇さん自体が悪いのではなく毒蛇さんの毒、要するに知恵をどう使うのがいいのか、ということを考えたいのです。」
「だからって言って噛みつかれたらどうするの?」
「でも、いつかは噛まれないといけないわけですよ。」
「……。知恵を得る、ってことか。」
「そういうことです。じゃあ、行ってきます。」
「じゃあ、気を付けて。」
「ありがとうございます。にわとりさんの飛行機も、もう少しで直りそうですね、頑張ってください。」
「そうそう、もう少しで直りそうだよ。いってらっしゃい。」
「さて、この辺で待ち合わせのはずだけど。」
「もういるよ、ここです。」
「おお、失礼いたしました、お待たせしました。」
「僕に自分から会いたい、って人は珍しいね。」
「知恵である蛇はどう考えても重要で必要です。それなのに、知恵のせいで本当にやりたいことが判らなくなる、というのはどうしても違和感があるので蛇さんと話してみたいと思いまして。本日はお時間をありがとうございます。」
「実はそうなんだよね、人々はとにかくいつも不安で知恵を欲しがるのに社会の常識に縛られる自分に苦しんでいるんだよね。全く面倒見切れないよ。」
「まあ、自分で優先順位を付けられない位だから、本当にやりたいことなんて無いんでしょうな。」
「そういう言い方をされても仕方ないですよね。ただ、みんな自分に自信が無いんですよね。自分ならやれる、という確信が無いんです。」
「そんなもの無くて当たり前じゃないか、本当にやりたいことは、初めてのことなんだから確信なんてあるわけない。」
「そんなときこそ、知恵を使いこなして挑戦していくことで知恵も育つから結局は続けていれば出来る、そんなことに事前に確信が欲しいなんておかしいでしょ。」
「おっしゃることは判ります、しかし、どんなことでも結局やっていれば出来る、という確信は持っても良いと思うのです。」
「それは、知識を知恵に育てられるようになった状態だよ、自分で情報を知恵に還元出来ない人は一生そうはならないよ。哲学が無いんだよ。」
「体感としては、出来なかったことでも頑張って取り組んでいれば出来た、という感じでしょ。それが成功体験だよ。成功体験は無い人には全然無いからね。」
「結局、情報を組み合わせたり、深めたり、組み替えることを学ばないと自信や確信は持てないのですね。今の時点で出来ること、判り切ったこと、ばかりしていては一生知恵を作れない。」
「そのためにも、しっかり基礎を学び、情報を扱えるようにならないといけない、その力が無いのに元からある知恵にだけ頼ってゴールまで行こうとするから、知恵が毒になってしまうのさ。振り回されるだけなんだ。」
「知恵の急性中毒ということですね、知恵を使うんじゃなくて頼り切ってしまう、だから知恵である蛇さんを毒蛇と呼ぶのですね。」
「知恵は大きな力だし頼りたくなる気持ちも判る、確実性という安心感は魅惑的だろうね。」
「でも、自分のやりたいことを損得やお金で評価したら、もっと簡単に得が出来ることがある、って勘違いしてしまう、得なんてものと自分がやりたいことを比べるなんて下らないし勘違いだよ。お金と本当にやりたいことを比べるなんて全く愚かなことさ。」
「だいたい人生が永遠にあるわけじゃない、という絶対的な事実を見逃しているんだよね。」
「結局、安心感を優先してしまうと、大事なことを後回しにしてしまうのかな、とも思います。」
「平気で後回しにするんだから大事じゃないんでしょw 出来なくてもいいと思ってるのさ。」
「でも、もし大事なことを先にやるんだったら知恵はとっても役に立つだろうね。どんどん使って磨かれていくさ。」
「知恵を得て大人になっても、大切なことを先にやることが出来れば迷子にならないのかもしれないですね。」
「それが難しいんだがね。」
かえるせいのおうじさま 第九章 終わり
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