かえるせいのおうじさま
「バラはひどいやつだったの?」
「そう思えばそうも見えたかもしれません、しかし、そういうつもりでもなかったのでしょう。」
「バラは気を引くためだったり、自分の弱さを隠そうとして、一生懸命自分を正当化したのです。それが結果としては嘘と言えば嘘になったのです。」
「バラの嘘はどんな嘘だったの?」
「そんなつもりじゃなかった。という言葉が多かったと思います。この言葉は相手の気持ちを考えなかった、という意味と、私には関係無い、という両方の意味があります。」
「バラには、もともと目的が無いのですが、目的が無い、と言ってしまっては話が始まりません、そこで目的があるふりをしたりします、そのことが後で嘘に見えてくるのです。」
「例えば?」
「じゃあ、にわとりさんが山登りが大好きだったとしましょう。そこで山登りを教えて欲しい。と言われたらどう思いますか?」
「それは、一生懸命に教えてあげたいよね。」
「でも、実はバラは、山登りには興味が無くて、相手の興味を引くための嘘なのです。」
「そうか、じゃあ、がっかりだね。」
「バラは相手をがっかりさせることを知っていても、興味を引くために嘘を言い続けます。それはバラがその場から動けないのに人に何かをして欲しいのでほかに手段が無かったとも言えます。」
「でも、最初から山に登る気が無いのにそんなことを言うなんて嘘つきじゃん。」
「その証拠が無いんです。その上、最初は完全な嘘じゃないかもしれないのです。」
「そんなことある?」
「言っただけで山に登った気になって飽きてしまうのです。結果としてはいつも口だけでやる気のない人、と言うことになります。」
「山に登らないことをバラは何て言って謝るの?」
「謝るのは勇気が要ります、同じことを繰り返しにくくなりますからね。」
「どういうこと?」
「バラはそのことを忘れます。最初から山に興味なかった、とか、お前のせいで山に興味無くなった、などと言います。」「そして時間がたつと山に登らないわけじゃないかも、みたいな言い方になります。」
「バラは、みんなを困らせようとしてるの?」
「そうではありません、他にやることが無いのです。」
「じゃあ、かえるさんはバラとは仲が悪くなって、かえる星に置いてきたの?」
「いや、ただ置いてきました。疲れたんです。そしてバラもかえるさんを必要としていませんでした。」
「他に方法が無いよね。」
「それが、時間がたつと面白いもので、勝手に真剣に聞いてた自分も悪い、と思うようになってきました。」
「しかも、山を登りたい、と言ったときはそれなりに本気だったのかもしれないわけです。」
「後で嘘になる、とわかっていても?」
「考えようによっては意志を貫ける人から見たら嘘に見えても、そうじゃない人にとっては言ったときに嘘でなければ嘘じゃないかもしれないのです。」
「そうか、子供のころの夢を諦めたからと言って嘘つきって言うのは言いすぎだもんね。人それぞれの程度問題とも言えるのか。」
「じゃあ、バラを星に置いてきたことを後悔しているの?」
「いや、全然、こういうことは終わって判るものだな、と思いました。」
「バラはかまって欲しかったの?」
「そんな言い方は良くありません、ただ、バラなりに一生懸命だったのかな、って思います。」
「ふーん。」
「相手の言い分を嘘、って思うのは期待が外れたからとも言える、だとしたら、嘘を感じた時に自分が何を期待していたかを考える機会とも言えるね。」
「そうです、かえるさんは、バラに悩まされていたのではありません、かえるさんは、バラを通して自分を見て悩んでいたのです。」
かえるせいのおうじさま 第二章 終わり
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